DAYS
アメリカの美の多様性について感じること
2021.6.2
2021.5.18
この挑戦に対してアメリカの中で肯定的な意見が多いことから「他人に迷惑をかけない、ミスをしない」ということが上位の価値観である日本社会との違いが非常に興味深いなと感じました。
しかし、スペースX社では「失敗を恐れて実験をしなければ、同じ問題を解決するのにもっと長い年月がかかってしまう。でも失敗をしてそこから学べば、結論に早くたどり着ける。失敗は、それほど数多くの知見を技術者に与えてくれる」という考えを持っているそうです。もちろん、何でもかんでもやってみるという訳ではなく、緻密な研究の後に実験していると思いますが、実際にやってみて失敗したほうが、失敗しない為のシュミレーションを延々と続けるよりも費用が抑えられ、結果コスト面でメリットがあるというのも、言われてみれば当然のことかもしれません。
また、失敗しないことが第一になってしまうと、思考回路から挑戦心や遊び心、冒険心というものがなくなってしまう。これは日本の社会全体において、ここ2,30年の停滞ムードの原因になっているのではないでしょうか。
一方、アメリカのこういった姿勢は、日々の生活はもちろん仕事でのマインドセットにおいても参考になるのではと思っているので、それぞれの気質や気持ちの持ち方の違いについて、僕が感じたことをまとめてみようと思います。あくまで、僕の身の回りでのことを元に感じたことを書いているので、アメリカの価値観を固定するものではありません。
また、β版で公開する文化(完成していなくても公開する文化、または後々完成していけば良い文化とも取れる)はアメリカのテック企業から始まったのではないかと想像しますが、これは日本企業が典型的に苦手な分野です。完成していない不完全なものをお客様に届けしていいはずがない。何かあったら誰が責任を取るんだ。という声が今も聞こえてきそうです。対し、アメリカは間違いは起こるもの、改善点があれば都度アップデートしていけばいいじゃないかという価値観が前提になるので、このβ版でも公開する文化が社会全体に根付いているような気がします。
余談ですが、資生堂のマンハッタンオフィスが新しいビルに引っ越した際、建物は全くの未完成状態でした。資生堂が借りる部分だけ使える状態、でも厳密にはカフェテリアなどは入居後数ヶ月使えませんでしたし、正面玄関であるオフィスロビーも未完成。ビル側としては、そもそも引き渡し時期に工事が間に合っていなくて、少しでも早く引き渡す必要があったのだと思うのですが、完璧に完成していなくてもとりあえずオープンして、そして例え何か問題があってもそのときにリカバリーすればOKという文化を身をもって感じた出来事でした。
日本だと、工事のせいで事故が起きたらどうする?怪我人がでたら誰が責任を取るんだ?という声があがって、しっかり完成するまでビルは引き渡されることはないでしょう。そもそも工事が大幅に遅れないということもありますが。笑
アメリカでは、間違いが起きることが前提になりすぎて、全体的に大雑把なところもあります。郵便物は届かないし、届いたと思うと違うものだったり、荷物を紛失したり、僕も何度も悩まされて腹も立ててきました。そしてアメリカ人はスーパーの店員から政府機関の職員まで、とにかく何でも人によって対応がまちまちで、マニュアルがきっと機能しないのでしょう。社会全体が日本よりルーズだと思います。日本では、間違いが起きないように社会自体が秩序立てられているので、荷物が紛失することはほとんどないですし、どこでもハイクオリティなサービスが提供されていて、安全対策もしっかりされています。
それぞれ一長一短ありますが、チャレンジ精神と間違いの許容というのは非常に密接に関係があるのだなというのが、ニューヨークに来て気付いたことのひとつです。
Information
MdNデザイナーズファイル2021の装丁デザインをしました。
発売日 :2021-02-24
仕 様 :A4判/272P
ISBN :978-4-295-20099-4
価 格 :本体 3800円(税別)
出版社 :エムディエヌコーポレーション
販 売 :Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com
詳細はMdN BOOKSをご覧ください。