DAYS アメリカの美の多様性について感じること

2021.6.2

これまでにも僕がニューヨークに来て驚いたことや、日本との違いを強く感じたことについて紹介したことがありますが、実はまだまだたくさんあります。

アメリカ、特にニューヨークは「人種のサラダボウル」や「人種のるつぼ」と呼ばれる程、日本とは比べ物にならないくらい多種多様な人々がいます。さらにこの街は音楽や芸術、食やファッションなど最新のものが集まる街でもあるので、多様なバックグランドを持つ人々と最先端の流行が掛け合わさることで、ファッションやヘア、メイキャップまでこれまでの常識を覆すようなユニークなスタイルに出会うことができます。

そこで、今日はいくつかのアメリカのメイキャップ/スキンケアブランドを「美の多様性」という切り口から見ていきたいと思います。実はアメリカに絞っても人気のコスメブランドは多いので、SEPHORAという化粧品専門店で大きく扱われている3つのブランドを取り上げたいと思います。

FENTY BEAUTY/FENTY SKIN

ミュージシャンのリアーナがプロデュースするブランド。メイクラインの方のFENTY BEAUTYは2017年9月にローンチ。日本では未発売のようですが、アメリカを中心に大ヒットしていて、インスタのフォロワーも1,000万人を超えるほどの人気ぶり。 多様性をテーマにしていて、BEAUTY FOR ALL、すべたのための人のブランドと謳っており、40色ものファンデーションラインナップを用意。

スキンケアラインのFENTY SKINは昨年の7月にローンチしています。健康的な肌がいいメイクにつながるし、逆にいいメイクは健康的な肌に見えると、リアーナ本人がWEBサイトの中で説明しているのが印象的でした。ウェブサイトのコミュニティにもすでに様々な人種のいろんな性別、年齢、センスの人の投稿で溢れていて、その人気ぶりを実感しました。


FENTY BEAUTYオフィシャルHPより。 多様な人たちがブランドのコミュニティに参加しています。

FENTY BEAUTYオフィシャルHPより。 多様な人たちがブランドのコミュニティに参加しています。

Milk Makeup

ニューヨークのチェルシーにある有名なフォトスタジオMilkから生まれたメーキャップブランドです。 クリエイティブ・ディレクターや、ビューティ/ファッションエディター、メイキャップアーティストたちから生まれたブランドらしく、ファッショナブルでユニークな発想のものづくりが行われているブランドです。

今は季節柄デオドラントをイチオシ商品として紹介していましたが、ここでもモデルは、性別や人種を問わずダイバーシティが考慮され、さらにプラスサイズにも配慮した選定になっています。またPhotoshopを使ったデフォルメされたビューティではなく、できるだけリアルな美の表現に徹しているように見えます。例えば左の女性はワキ毛を処理した後ではなく、うっすらと生えはじめた時に撮影しているのは意図的にリアルを演出する狙いがあるのだと思います。


MILKオフィシャルHPより

MILKオフィシャルHPより

Rare Beauty

こちらもミュージシャンのセレーナ・ゴメスが立ち上げたブランドで、パーフェクトではなくインパーフェクトを愛して、自分らしく心地よくいるということがレアビューティだということをコンセプトにしたブランドです。私たちは皆、自分自身を互いに比較するのをやめ、自分たちの独自性を受け入れてほしいというブランドメッセージがありました。


あなた自身に寛大に心地よく。私は完璧でいようとすることをやめました。ただ私自身でありたいのです。とセレーナ・ゴメスがコメントを出しています。

あなた自身に寛大に心地よく。私は完璧でいようとすることをやめました。ただ私自身でありたいのです。とセレーナ・ゴメスがコメントを出しています。


LIGHTからDEEPまで幅広くファンデーションの色を取り揃えています。

LIGHTからDEEPまで幅広くファンデーションの色を取り揃えています。

これらのブランドの他にも最近の新しいブランドに見える傾向として、他人になろうとするのではなく、ありのままの自分を受け入れて、心地よく生きる。そして自分も含めて他人の多様性を認めよう。という方向性のブランドフィロソフィーがベースに見えます。それが絶対必定条件にも感じました。その上でブランドの個性が確立されているというのが、近年のコスメティックブランドのトレンドの一つになっていると感じます。

ちなみに、コスメティック以外の領域で言えば、絆創膏のバンドエイドは2020年6月BLACK LIVES MATTERの気運の高まりを受けて、レイシズムに明確に反対しBLM運動にドネーションする声明を発表しました。そして、ミディアムからディープなシェードまで幅広い肌色に合わせたカラーバリエーションを発売しました。2005年にも一度発売していたそうなのですが、当時は需要が多くなくまもなく廃止されたそうですが、昨年また復活させたようです。

その他、下の写真は近所のお店(TARGET)ですが、昨年、サンタクロースのぬいぐるみも黒人のサンタクロースが登場していました。近年のアメリカはクリスマスの挨拶も、メリークリスマスと言わずにハッピーホリデー!というのが定番の挨拶になっていますが、ブランドやメーカーはもちろん、アメリカ社会全体において、多様性への配慮というのは欠かせないものとして浸透しつつあると思います。一方で、どこまで配慮するのが皆が心地良いと感じるのか、そのバランスも見極めていく必要があるのかなとも思います。


Artboard 8.jpg

Information

MdNデザイナーズファイル2021の装丁デザインをしました。

発売日 :2021-02-24
仕 様 :A4判/272P
ISBN :978-4-295-20099-4
価 格 :本体 3800円(税別)
出版社 :エムディエヌコーポレーション
販 売 :Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

詳細はMdN BOOKSをご覧ください。