DAYS 好きなことを続ける。

2021.1.19

旅に行けない状況が続いていますが、この記事では旅に関係する話、そしてそれが仕事にも影響をもたらしたということについて書きたいと思います。

僕は旅が大好きです。美味しいものを食べたり飲んだり、いろんな人と出会ったりするのも旅の醍醐味ですが、その中でも特に写真を撮ることが好きです。知らない街に行った時、まずはその街の一番高いところに登ります。街の全体感を見渡しながらその街の空気を感じると、わくわくして最高に楽しい瞬間です。

ゴシック教会の尖塔、ビルの屋上、凱旋門の上、タワーの上、小高い丘の上など、これまで色々なところに登ってきました。場所によっては何百段もの階段や急な坂を登らなくてはならず、結構大変な思いをすることもありますが、それを乗り越えて見下ろす街並みは素晴らしく、特に街行く人々が見えるところが自分的感動のポイントです。なので、六本木ヒルズとか街並みとの距離がありすぎるところにはそこまでそそられません。人を俯瞰で撮影し始めると時間を忘れて没頭するほどとても熱中してしまいます。だから、歩いている人たちが程よく見える距離感がいいんですよね。笑

どうしてここまで惹き付けられるのか、その理由を突き詰めてみたことはないのですが、おそらく普段の自分の目線から見ている視点とは違うところから見てみる面白さみたいなものがあるのではと思っています。この理由についてはまた改めて向き合ってみたいと考えているのですが、とにかく僕はこういった写真を撮るのが好きで、もう何年も何枚も撮り続けています。


IMG_5010.jpg


バルセロナ、コロンブスの塔より。 展望台は3、4人も入れば一杯のかなり細いタワーで風が吹くと結構揺れます。

バルセロナ、コロンブスの塔より。
展望台は3、4人も入れば一杯のかなり細いタワーで風が吹くと結構揺れます。

この記事でお伝えしたいのは、何となくでもずっと好きで惹かれているモノやコトは、次の新しい自分を開拓するきっかけになり得るということです。僕の「俯瞰から人々を撮る」というようにマニアックな趣味でも構いません。むしろ、本業と一見関係のないことの方が、次の自分を発掘するにはちょうどいいかもしれません。ぜひ、萌える何かがあればそれを大事にしていてください!自分の興味を喚起させるものは、自分を突き動かすパワーを持っているので、必ず新しい気づきをもたらすと僕は信じています。


ロンドン、大英博物館の2階より。

ロンドン、大英博物館の2階より。

「俯瞰から人々を撮る趣味」が仕事に生きた例を紹介します。資生堂で2017年にリンクオブライフ展という展覧会があって、そのメインビジュアルを制作しました。テーマは“エイジング”。とはいってもアート展なので、アンチエイジングの化粧品を展示するようなものではなく、資生堂の研究員が外部のアーティストとコラボレーションをして、エイジングをテーマにアート作品を作るという趣旨の展覧会でした。

果物が時間をかけて発酵していく様子を美しくプレゼンテーションする人もいれば、カレーが時間をかけて旨味が凝縮されるのを解析する人もいて。幅広い展示作品ですが、時間の経過というのが共通テーマの展覧会でした。


Aging_top.gif

このメインビジュアルを制作するにあたり、時間の経過を表現する……なんて、難題なんだ!と行き詰まっていたところ、「俯瞰から人々を撮る趣味」を生かした表現が思いつきました。人(ここではフィギュア)を俯瞰から写真撮影してそれを日時計のように影を回して見せることで“時間の経過”という概念を表現しました。

このポスターは、まさかニューヨークのONESHOWという広告賞の銀賞を取り、それは自分にとっては初めての大きな海外賞でした。もちろん、このビジュアルにたどり着くまでには山あり谷ありでしたが、そんなしんどい時、紆余曲折ある時に、自分が気になる、自分が好きな何かを実現したいという思いは、自分を突き動かす原動力になりました。そして、この賞を受賞したことは、自分がデザインの道を進んでいく上で非常に大きな意味があったと改めて感じています。

ちなみに、趣味の写真はすごく小規模ですが2年ほど前に自費で写真集にしたところ、代官山と銀座G-SIXの蔦屋で取り扱ってもらって、予想以上の広がりがあって驚きました。人が夢中になって作ったものは、さらに人を動かすパワーがあるのだなと思いました。

みなさんもぜひ、本業とは一見関係ない、その好きな何かを続けてください!きっと新しい自分発見につながるはずです。


IMG_1080.JPG


IMG_1077のコピー.JPG

過去の旅の写真を振り返っていたら、猛烈に旅に出たくなりました。
この状況が落ち着いたら、新たな出会いと新たな人々の俯瞰を探しに旅に出たいと思います。笑

Information

MdNデザイナーズファイル2021の装丁デザインをしました。

発売日 :2021-02-24
仕 様 :A4判/272P
ISBN :978-4-295-20099-4
価 格 :本体 3800円(税別)
出版社 :エムディエヌコーポレーション
販 売 :Amazon 楽天ブックス ヨドバシ.com

詳細はMdN BOOKSをご覧ください。